失業か?人手不足か? 真の「働き方改革」を問う。
2019.04.30
近年、我が国の労働市場を取り巻く環境として同時に語られる「相反する2つの懸念」とは、深刻な労働力不足時代の到来と、AIやロボティックスの社会普及による人間の雇用が奪われる問題である。
三菱総合研究所の分析によれば、どちらの懸念も半分は核心を外しており、問題の本質は「労働者の持つスキル」と「求められるスキル」のミスマッチが広がることにあるのだという。
これまで、経済や産業構造の変化に対する柔軟性が低かった日本の労働市場だが、人口減少や国民の健康寿命の長期化などにより労働供給の構造が変化し、人間のタスクがAIやロボティックスなどの新技術に代替されていくなど需要面も変化し始めている。また、今後は、新技術を用いて新規ビジネスを生み出す人材や、AIなどに代替されない創造的タスクを担う人材の需要の高まりが予測される。
2020年代には、事務職や生産職などで雇用の余剰感が増し、専門人材の不足幅が拡大するなどの職業別のギャップが生じるであろう。⇒つまり、中長期的な日本の労働需給を展望すると、本質的な課題は人手不足ではなく、人材のミスマッチにある。本稿では労働者に求められる能力と労働者が持つ能力の差のことを「人材ギャップ」と呼ぶ。
マクロの労働需給ギャップ試算では、「新技術を活用し新たなビジネスを生み出す人材の需要」の増加が織り込まれているが、それに見合う専門人材の供給がなければイノベーションを生み出すことはなく、日本経済は国際競争力を失ってしまう可能性がある。
2019年4月1日より順次施行され始めた「働き方改革関連法」はゴールではなく、未来の経済社会や技術の潮流を見据えながら日本の労働市場や慣行を進化させることで、多様な人材の労働市場への参加や、学び直しによって新たな挑戦が可能になること、更に、誰もがより良い将来の展望を持てるようになることを目指すべきであろう。
(PRESIDENT Online『”人手不足とAI失業”どちらが本当か? 仕事と能力のミスマッチこそが問題』2019年4月26日)
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