【警告】シンギュラリティは「神」を生み、人類を時代遅れにする(新時代の黙示録か…)
2019.07.16

テクノロジーごときを「神」と仰ぐ人間への疑問
現状のままAIが進歩し続けると2045年くらいには「人間を超えるAI」が誕生するという予測があり、「シンギュラリティ」(技術的特異点)と呼ばれている。
300万部を超えるベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者・片山恭一氏が新著『世界の中心でAIをさけぶ』のなかで、「シンギュラリティは21世紀の新しい宗教」と定義している。その宗教は、70億を超える人類のすべてを帰依させる力を持ち、いまだかつて人類が体験したことのない「全体的かつ統制的な宗教」であると言う。
シンギュラリティは本質的な意味で「特異点」なのであり、単なる技術革命や機械革命ではない。なぜなら、コンピュータ技術にバイオテクノロジーや遺伝子工学などの生命科学が結びついたことにより、シンギュラリティは人間という生き物の意味を変えてしまい、延いては全生物の運命を変える可能性を秘めてしまったからだ。
例えば、遺伝子編集ツール『CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)』の発見と普及によって、コンピュータ・サイエンスや遺伝子工学などのテクノロジーの力を借りて、自分自身を含めた全世界を思い通りに創造しうる能力を人類は手にしようとしており、ホモ・サピエンスに代わる新しい人類「「ホモ・デウス」(歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリによる命名)が登場し、「神なる人間」という新しいタイプの人類になろうとしている。そして、すでに多くの人類たちが「神なる人間」を目指して自己をアップグレードし始めており、この志向は今後さらに強まると予測される。そうなると、人間(ホモ・サピエンス)は時代遅れになってしまうが、もう既に我々は毎日アマゾンやグーグルやフェイスブックにアクセスすることによって、未来の「ホモ・デウス」たちにデータを提供するだけの存在になりつつある。
最新の脳科学や生命科学によれば、人間は感情や情動や欲望も含めて精密な「アルゴリズム」であり、ホモ・サピエンスたる人間が洞察力も才気も直観も明敏さもないテクノロジーごときを神と仰ぐことになってしまっているのは、アルゴリズムを支配する司祭がコンピュータ・サイエンスを中核としたテクノロジーであるためだ。
ただし、人間のなかにあるアルゴリズムという人工的な自然を神とみなすのでるなら、シンギュラリティという未知の世界を、誰もが豊かに味わい深く生きることができるだろう。それが本来的に人間を創生させることだ。
(東洋経済『テクノロジーごときを「神」と仰ぐ人間への疑問』2019年7月13日)
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