【機械学習】「おいしい牛乳と地球温暖化のカギは腸内細菌」⇒菌を憎んで牛を憎まず!

2019.07.22

高品質な牛乳の生産し、メタンガス削減する 新視点のAI活用


生物学の分野で腸内細菌が及ぼす人体への影響が注目を浴び、腸内細菌の影響が人間の発症する多くの病気のみならず、心理状態など精神面にまで及ぶという研究結果が続々と発表される中、機械学習を使って、牛の腸内細菌と牛乳の品質、メタンガス排出量の関係性を精査した研究結果が公表され、話題を集めている。
英国アバディーン大学、ノッティンガム大学、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学、フィンランド国立資源研究所など、8カ国11の研究機関で構成された国際共同研究チームが、人間だけでなく牛も腸内細菌による影響を受け、牛乳の味が変化するだけではなく、各個体から排出されるメタンガスの量にも変化が生じるという研究結果を発表した。
研究チームは、英国、イタリア、スウェーデン、フィンランドの4カ国7つの農場で飼育されている1016匹の乳牛から牛の形質情報と腸内細菌のDNAを収集し、機械学習技術で「腸内細菌がどのように個体に作用するか」を分析し、人間の腸内細菌と同様にすべての牛がそれぞれに独特の腸内細菌を保持しているという結果が確認された。また、牛が512種類の腸内細菌を共通して持っており、そのうち39種の主要な腸内細菌が牛乳の味とメタンガスの生成に影響を与えるという因果も明らかにした。さらには、それら腸内細菌が牛乳の味とメタンガスの生成に影響する度合いは遺伝子より強いということを確認している。
これらの結果を踏まえ、乳牛の飼料に特定の腸内細菌を添加すればメタンガスを削減しながら高品質な牛乳を作り出すことができるはずだという仮説が立てられ、研究成果が応用されることに期待が寄せられる。
酪農分野ではこれまで「良質な飼料や飼育環境がおいしく栄養価が高い牛乳を生み出す」ということが常識とされていた一方で、牛やヤギ、羊のような反芻動物がゲップや放屁を通じて毎年1億t近くのメタンガスを排出するため、学界では“地球温暖化の主犯”だと主張されるケースが多かった。今後、腸内細菌と各個体の相関関係が分かるようになれば、地球温暖化を防ぎつつ、高品質な牛乳を引き続き生産することが可能になっていくかもしれない。
地球規模の課題とされる食糧・環境問題にイノベーションを起こす重要な学問領域である「生物学の分野」は、今後、人間の認知限界を超える機械学習などAIの主戦場のひとつになるはずである。
(フォーブス ジャパン『高品質な牛乳の生産し、メタンガス削減する 新視点のAI活用』2019年7月19日)

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